シリーズ【人間って、めんどくさい。】
– クリアサイトジャパン代表の、ちょっと深い人間観察 –
「人のため」のつもりが、実は自分のためだったり。人間の行動には、本人さえ気づかない本音や思い込みが隠れているもの。クリアサイトジャパン代表・飯田まりの(麻璃凛/まりりん)が、日常に潜む人間の矛盾や意識の不思議を、ちょっと辛口、ユーモアを交えてひもとく全5話。自分の人生を自分で選ぶためのヒントをお届けします。
気づけば、他人の問題解決係になっていませんか?
友人との何気ない雑談。
「最近、ちょっと困っていることがあってね……」
そんな話を聞いただけなのに、つい親切心が顔を出して、
「それなら、こうしたらいいんじゃない?」
と、アドバイスを始めてしまうことはありませんか?
ここまでは、よくある会話です。
ところが、話しているうちに、
「あ、それなら詳しい人を知っているから紹介するよ」
「私もちょっと調べてみようか?」
「よかったら手伝おうか?」
……と、親切心がどんどん増殖。
気づけば、いつの間にか自分が問題解決の担当者になっている。
あれ? これって誰の問題でしたっけ?
最初は、ただ話を聞いていただけだったはずなのに。
しかも、頼まれてもいないのに自分から引き受けてしまったので、今さら断るのも気が引ける。
結局、自分の予定を後回しにして、他人の問題に取り組むことになるのです。
親切心にも、ちょっと困ったところがある
日常的に親切心の花を咲かせている人は、他人の困りごとを見つけるのが上手です。
そして、放っておくのが苦手。
誰かの役に立ちたい。
困っているなら助けてあげたい。
その気持ち自体は、決して悪いことではありません。
実際、「いい人」でいると、相手から感謝されたり、信頼されたりします。
「ありがとう! 本当に助かった!」
なんて言われたら、うれしいものです。
人の役に立てたという達成感もあります。
でも、ここで一つ質問です。
もし相手から感謝されなくても、あなたは同じことをするでしょうか?
ちょっと考えてみてください。
人の役に立つことは素晴らしいことです。
しかし、自分の時間や体力を犠牲にしてまで、積極的に身を削る必要があるのでしょうか。
自らを犠牲にして積極的に身を削るのは、消しゴムだけでいいのです。
なぜ、他人の問題にそこまで積極的になるの?
私は、他人の困りごとを必要以上に引き受けてしまう背景には、大きく分けて二つの心理があるのではないかと考えています。
もちろん、人の行動の理由はもっと複雑ですし、二つが重なっていることもあります。
1.他人の評価で、自分の価値を確かめたい
一つ目は、自分自身の価値を、他人からの評価によって確認しようとすることです。
自分では、自分がどれほど役に立つ人間なのか、十分に自信が持てない。
だからこそ、誰かの役に立って感謝されると安心する。
「ありがとう」と言われることで、自分にも価値があると感じられるのです。
ところが、この方法には少し厄介なところがあります。
自分の価値を他人の評価に預けてしまうと、相手からの反応によって、自分の気持ちまで左右されやすくなるのです。
感謝されれば満足する。
でも、感謝されなければ、何となく面白くない。
それどころか、相手が自分の助けを必要としなくなると、寂しさを感じてしまうこともあります。
本来、相手が自分で問題を解決できるようになるのは喜ばしいことのはず。
それなのに、自分の出番がなくなると、どこか物足りない。
人間って、本当にめんどくさいものですね。
2.自分自身の問題に向き合うことを、避けている
もう一つは、他人の問題に取り組むことで、自分自身の問題から目をそらしている場合です。
本当は、自分の人生にも気になっていることがある。
「このままではいけない」
「何かを変えなければ」
心のどこかでは、そう感じています。
けれども、現状を変えることには不安がある。
新しいことを始めても、今より悪い状況になってしまうかもしれない。
失敗するくらいなら、今のままの方が安全かもしれない。
そんなリスクを心配する思いから、自分の問題にはなかなか手をつけられないのです。
ところが、他人の問題となると話は別。
自分の人生を大きく変える必要はないし、何をすればよいのかも分かりやすい。
しかも、誰かの役に立てば達成感まで得られます。
自分の問題には手をつけられないのに、他人の問題には驚くほど積極的。
そんなことが起こる場合もあるのではないでしょうか。
また、「人のために良いことをしていれば、いつか自分にも良いことが返ってくる」と期待していることもあるかもしれません。
いわゆる「徳を積む」という考え方ですね。
もちろん、善意が思いがけない形で自分に返ってくることもあるでしょう。
ただし、親切を積み重ねたからといって、自分の抱えている問題が自然に解決するとは限りません。
「変わりたい。でも、変わるのは怖い」
特に二つ目のタイプについて、私は興味深く感じています。
これまでの人生で大きなストレスや困難を経験してきた人ほど、新しい変化に慎重になることがあるように思うからです。
「今の状況には満足していない」
「でも、変えてしまったら、もっと悪くなるかもしれない」
そんな気持ちがあると、現状を維持することが自分を守る方法になります。
それでも、何も変わらない毎日には不満が残る。
そこで、他人の問題を解決することが、自分の人生にも何か良い変化をもたらしてくれるのではないかと期待する。
けれども、いくら誰かを助けても、自分の人生の問題がそのままなら、満たされない気持ちは残ります。
そして、また別の誰かの役に立とうとする。
そんな循環に入ってしまうこともあるのではないでしょうか。
「いい人」でいることと、自分の人生を生きること
ここまで読むと、「じゃあ、人に親切にしない方がいいの?」と思われるかもしれません。
もちろん、そんなことはありません。
人を助けることも、誰かの役に立つことも、素敵なことです。
ただ、その行動が本当に自分の意志によるものなのか、一度考えてみてもよいのではないでしょうか。
「助けたいから助ける」
それとも、
「助けなければ、自分には価値がない気がする」
あるいは、
「自分の問題を考えるより、他人の問題に取り組んでいた方が気が楽」
同じ親切な行動でも、その動機はずいぶん違います。
クリアサイトでは、自分自身の意識を観察し、自分と他人の問題を区別することを大切にしています。
誰かが困っているからといって、その問題を必ず自分が解決しなければならないわけではありません。
相手には相手の人生があり、自分には自分の人生があります。
もちろん、本当に助けが必要な人には、手を差し伸べることも大切です。
重要なのは、自分がどのような理由で関わろうとしているのかに気づくことです。
他人の人生を大切にするのと同じように、自分自身の時間や人生も大切にしてよいのです。
今回の「人間って、めんどくさい。」
最後に、もう一つだけ質問させてください。
あなたが「いい人」でいようとするとき、その親切は誰のためのものでしょうか?
相手のため?
それとも、自分が安心するため?
答えが一つとは限りません。
そして、どちらかが必ず悪いということでもありません。
大切なのは、自分が何を求めてその行動を選んでいるのかを知ることです。
「いい人」をやめる必要はありません。
ただし、
「いい人でいなければ、自分には価値がない」
そんな思い込みまで持ち続ける必要はないのです。
誰かの人生を助けることに一生懸命になりすぎて、自分の人生が後回しになっていませんか?
たまには、自分自身のためにも、その親切心の花を咲かせてみてください。
「人間って、めんどくさい。」は、クリアサイトジャパン代表が、人間の意識や行動、日常の中にある思い込みについて考えるコラムです。
次回予告:第2話「人に必要とされないと、不安になる人たち」

