第2話 人に必要とされないと、不安になる人たち


CLEARSIGHT JAPAN|代表コラム

シリーズ【人間って、めんどくさい。】
– クリアサイトジャパン代表の、ちょっと深い人間観察 –
「人のため」のつもりが、実は自分のためだったり。人間の行動には、本人さえ気づかない本音や思い込みが隠れているもの。クリアサイトジャパン代表・飯田まりの(麻璃凛/まりりん)が、日常に潜む人間の矛盾や意識の不思議を、ちょっと辛口、ユーモアを交えてひもとく全5話。自分の人生を自分で選ぶためのヒントをお届けします。

「あなたがいないと困るのよ!」は最高の褒め言葉?

誰かから頼りにされると、ちょっとうれしいものです。

「あなたがいてくれて助かった!」
「やっぱり、あなたにお願いしてよかった!」
「あなたがいないと、どうしていいか分からないわ!」

こんな言葉をかけられたら、悪い気はしませんよね。
むしろ、頼られることが自分の喜びになっている人も多いのではないでしょうか。

しかし、ここでちょっと考えてみてください。
いつも相談してくれていた友人が、ある日から相談してこなくなった。
何かあったのかと思えば、自分で問題を解決できるようになっていた。
本来なら喜ばしいことです。

「よかったね!」と笑顔で祝福すればいい。
ところが、なぜか心のどこかに寂しさが残る。

「あれ? もう私に相談してくれないの?」

「私じゃなくてもよくなったの?」

……おやおや。

相手が自立したという素晴らしいニュースなのに、こちらはまるで失業したかのような気分です。
相手の問題が解決したのに、自分の存在価値まで行方不明になってしまう。
人間って、本当にめんどくさいですね。

誰かの役に立つことで、自分の価値を確認していませんか?

例えば、家庭の中でこんなことはありませんか?


家族の予定を管理する。
子どもの忘れ物をチェックする。
夫が困らないように先回りして準備する。
親の頼み事には、優先して応える。


こうして毎日忙しく働いていると、自分が家族にとって欠かせない存在だと感じられます。

「私がいなければ、この家は回らない」

確かに、そういう状況もあるでしょう。
ところが、子どもが成長し、自分で何でもできるようになったら?
夫が自分のことを自分で済ませるようになったら?

それまで自分が担っていた役割が減ったとき、喜びよりも寂しさを感じることがあります。

「もう私の出番はないの?」

仕事でも似たようなことがあります。
後輩に仕事を任せればよいのに、つい自分でやってしまう。
頼まれてもいない仕事まで引き受ける。
誰かが困っていると、自分の仕事を中断してでも手伝いに行く。
そんな人が、組織に一人くらいいませんか?

もしかしたら、その人はとても親切で責任感の強い人なのかもしれません。
しかし、その行動の中に「自分が必要とされる場所を失いたくない」という気持ちが隠れている場合もあります。

自分に自信がないからこそ、頑張りすぎる?

私は、人に必要とされることを強く求める人の中には、自分自身の能力や価値を十分に認められない人もいるのではないかと考えています。
例えば、
「私には特別な才能がない」
「人より優れた知恵やアイデアがあるわけでもない」
「自分一人では大したことができない」
そんなふうに考えている人です。

けれども、誰かのために一生懸命働くことならできます。
面倒な仕事を引き受ける。
人が嫌がる役割を率先して担う。
誰かの問題を解決するために、時間や労力を惜しまない。

そして、相手から感謝されると、
「ああ、私にもできることがある」
「私にも価値があるんだ」
と安心する。
ここで少し厄介なのは、他人の問題を解決することが、自分の価値を確認するための手段になってしまうことです。
誰かの役に立つことで得られる満足感は、決して悪いものではありません。
しかし、その満足感がないと自分に価値を感じられないとしたら、どうでしょうか。
自分の価値を確かめるために、次々と誰かの問題を探し続けなければならなくなります。
まるで、自分の存在価値を他人からの「ありがとう」で充電しているようなものです。

ところが、他人の「ありがとう」は、いつでも都合よく届くわけではありません。
感謝されない日だってあります。
誰からも頼られない日だってあります。
そのたびに、自分の価値まで下がってしまうとしたら、ずいぶん不安定な話ですよね。

認めてほしかった相手は、誰だったのでしょう?

こうした行動の背景には、過去の人間関係が影響している場合もあると思います。
例えば、子どもの頃。
親がとても厳しかった。
良い成績を取れば褒めてもらえる。
親の希望する学校に進めば、認めてもらえる。
言われたことをきちんと守れば、良い子だと思ってもらえる。

ところが、どれほど頑張っても、十分に認めてもらえなかったとしたら?

「もっと頑張らなければ」
「まだ自分は足りないんだ」
そんな思いが残ることもあるでしょう。

そして大人になり、親元を離れたとしても、今度は夫や義理の両親、職場の上司など、別の誰かから認められることを求めてしまう。
もちろん、すべての人が親子関係によってこうした行動を身につけるわけではありません。
けれども、認めてもらいたい相手が変わっただけで、認めてもらうために頑張るという習慣は変わっていないこともあるのではないでしょうか。

親の期待から離れたはずなのに、今度は別の誰かの期待に応えようとしている。
相手が変わっても、人生の主導権は相変わらず他人が握っている。
これでは、なかなか自分の人生を生きる時間がありません。

「あなたがいなくても大丈夫」は、喜ばしいことのはず

ここで、もう一つ面白い矛盾があります。
私たちは、大切な人には幸せになってほしいと願います。
困っている人には、問題を解決してほしい。
自信のない人には、自信を持ってほしい。
誰かに依存している人には、自立してほしい。
ところが、その人が本当に自立して、自分の助けを必要としなくなったら?
何となく寂しい。
自分の存在意義がなくなったような気がする。
中には、相手が自分でできることまで手伝い続けてしまう人もいるかもしれません。

でも、ちょっと待ってください。
そもそも、私たちはその人が自分で問題を解決できるようになることを望んでいたのではありませんか?
もし、相手が自立することによって自分が不安になるのだとしたら、そこには相手の問題とは別に、自分自身が向き合うテーマがあるのかもしれません。

それは、「誰かに必要とされていない自分を、どう評価しているのか」ということです。
人から頼られることでしか自分の価値を確認できないとしたら、相手が自立することは、自分にとって都合の悪い出来事になってしまいます。
他人の成長を願いながら、その人に必要とされ続けたいとも思っている。
なかなか複雑な心境です。

では、誰の役にも立たない時間を過ごせますか?

ここで、一つ試していただきたいことがあります。
誰かのために何かをする予定のない時間を、少しだけ作ってみてください。
家族の世話でもなく、仕事でもなく、友人の相談に乗ることでもない。
ただ、自分のために時間を使うのです。
好きな本を読んでもいい。
散歩に出かけてもいい。
何もしないで、ぼんやり過ごしても構いません。
そのとき、どんな気持ちになるでしょうか?

「こんなことをしていていいのかな」
「何か有意義なことをした方がいいのでは?」
「時間を無駄にしている気がする」
そんな思いが浮かんでくるかもしれません。

もしそうなら、少し考えてみてください。
あなたは、何かをしていなければ価値のない人間なのでしょうか?
誰かの役に立たなくても、何かを達成しなくても、あなた自身の人生はそこにあります。
自分のためだけに時間を使うことに、誰かの許可が必要なのでしょうか。

自分の価値を、他人に決めてもらわない

クリアサイトでは、自分自身の意識を観察することを大切にしています。
自分が今、何を感じているのか。
何を望んでいるのか。
そして、なぜその行動を選ぼうとしているのか。
こうしたことに気づいていくのです。

例えば、誰かに頼まれ事をしたとき。
すぐに引き受ける前に、少しだけ自分に問いかけてみます。

「私は本当に、この人を助けたいのだろうか?」
「それとも、必要とされることで安心したいのだろうか?」

どちらの気持ちもあるかもしれません。
それでも構いません。
大切なのは、自分の中にある気持ちを否定することではなく、気づくことです。
そして、引き受けるかどうかを自分で選ぶこと。

相手が本当に困っているなら、手を差し伸べてもいい。
自分に余裕がなければ、断ってもいい。
相手が自分でできることなら、見守るという選択もあります。

クリアサイトが大切にしている自由意志とは、誰かの期待に応えることを義務にするのではなく、自分自身の意識に気づき、自分で選択することでもあります。

相手の人生を尊重することと、自分自身の人生を大切にすること。
その両方ができる関係を築いていきたいものです。

今回の「人間って、めんどくさい。」

最後に、こんな質問をしてみたいと思います。
誰からも頼られず、誰の役にも立っていないとき、あなたは自分自身を好きでいられますか?
人から感謝されることは、うれしいものです。
必要とされることも、素晴らしいことです。
でも、誰かに必要とされることだけが、自分の存在価値を決める基準になってしまうと、自分の人生が他人の都合によって左右されてしまいます。
誰かに必要とされるために生きるのか。
それとも、自分自身が納得できる人生を生き、その中で誰かの役にも立つのか。
同じように見えても、その二つは少し違います。
誰かに必要とされなくなったからといって、あなたの価値がなくなるわけではありません。
むしろ、誰かのために使っていた時間や力を、これからは自分自身の人生に向けられるのかもしれません。
あなたは、誰かの問題を解決するためだけに生きているわけではないのですから。

「人間って、めんどくさい。」は、クリアサイトジャパン代表・飯田まりの(麻璃凛/まりりん)が、人間の意識や行動、日常の中にある思い込みを、少し辛口のユーモアを交えて考察するコラムです。

次回予告:第3話「正しいことをしているはずなのに、なぜ嫌われる?」
(10月30日18:00 配信予定)
人のために良いことをしているはずなのに、なぜか相手から嫌がられてしまう。もしかしたら、あなたの「正しさ」が、相手にとっては少し窮屈なのかもしれません。

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